豊饒の海シリーズの最終話だったが、本多に救いらしいものはなかった。清顕の生まれ変わりと見込んだ透はどうも違うようだったし、聡子からも突き放されて終了した。輪廻の真理に挑んだが、挫折したような終わり方。夢のごとく、海の波のごとくすべての人生の努力は灰塵に帰しもとの無意識の世界に帰っていくことを暗示しているように思った。結論が出ないのでいくらでも続けられる物語。この場合、終わり方は、結局はどうしても爽快感が得られるものではない。個人的には異なる道を辿り、ある境地に達していると思われる聡子に最期にもう少し語って欲しかった。一方でこれだと本多にとっては救いになってしまうので有り得ないのかとも思う。いずれにしても最後は随分、急いだような感じ。市ヶ谷自衛隊の件が迫っていたからだろうか。
ともあれ、終了。話は全般的に良かったが、読者の行間の想像をできる限り排そうとした、コテコテの文章は自分には厳しかった。イメージができた時点で景色描写の修飾は飛ばし読みになってしまった。
今度は、また、エンターテイメント系の北方三国志。愉しめるだろう。その後はわからないが、青空になっている漱石でも久々に読んでみるか。学生時とは違う印象を持つかもしれない。